新潟の冬と照明計画

新潟の1月は、東京の3分の1しか陽が射さない―商業空間の照明計画を、住まいに持ち込む

家づくりの打合せで、照明の話が出てくるのはたいてい終盤です。

間取りが決まり、外観が決まり、キッチンや床材を選び終えたあたりで、「照明はどうしますか?」と聞かれる。カタログを見ながら、部屋の広さに合わせて器具を選んでいく。多くの方が、そういう順番で決めていかれます。

けれど新潟で家を建てるなら、照明はもう少し前に、もう少し真剣に考える価値があります。

理由は、この土地の空にあります。

結論から言うと、新潟の住まいで照明計画が効くのは、冬の日照時間が全国でも際立って短いから。 そして照明を「明るさ」だけで決めてしまうと、その効き目を取りこぼします。

新潟の1月の日照時間は56.4時間。東京は192.6時間

気象庁の平年値(1991〜2020年の30年平均)で、新潟の年間日照時間は 1,639.6時間。東京は 1,926.7時間 です。

年間で見ると、その差は約15%。「思ったほど変わらない」と感じるかもしれません。

ところが、月別に見ると景色が一変します。

 

1月の日照時間は、東京の3分の1以下。

新潟地方気象台も、冬に日照時間が少なくなる理由を「冬型の気圧配置となって曇りや雨または雪の日が多いため」と説明しています。同じ資料には、新潟の冬の最高気温5.3℃・最低気温0.1℃とその差が5℃程度と小さいことについても、「曇りや雨または雪の日が多いためです」と書かれています。

つまり新潟の冬は、気温が低いこと以上に「陽が射さないこと」が特徴の気候なのです。

12月から2月の3か月間で見ると、新潟の日照時間は合計193.6時間。東京の同じ3か月間(537.4時間)の、およそ3分の1です。

この3か月、家の中の明るさをつくっているのは、窓ではなく照明です。

照明を「畳数」で選ぶと、冬の夕方に効いてくる

照明器具のカタログには「〜畳用」という表記があります。明るさの目安としては便利で、そこを外していなければ暗くて困ることはあまり起きません。

ただ、畳数表示が答えてくれるのは「どれだけ明るいか」だけです。

照明の善し悪しを決める要素は、ほかにも3つあります。

  • 光の色(色温度)— 同じ明るさでも、暖かく感じるか、寒々しく感じるか
  • 色の見え方(演色性)— 料理や木や肌の色が、本当の色に見えるか
  • 光の配り方(配光)— 天井から一様に降らせるか、必要な場所に置くか

冬の新潟で差が出るのは、明るさよりむしろこの3つのほうです。

外が一日中どんよりしている日に、天井の1灯だけで部屋全体を白く照らすと、室内が「曇り空の続き」のように見えてしまうことがあります。明るさは足りているのに、居心地が上がらない。よく耳にする「なんとなく落ち着かない」の正体は、ここにあることが少なくありません。

商業空間では、明るさより先に「光の色」を決める

私たちモリタ装芸は、1975年の創業以来、住宅と並行して商業施設やショールームの設計・施工を手がけてきました。

商業空間の照明計画は、住宅とは順番が違います。

まず「何を、どう見せたいか」を決める。そこから光の色を決め、器具の位置を決め、最後に明るさを確認する。明るさは目的ではなく、結果として決まるという考え方です。

光の色(色温度)は、ケルビン(K)という単位で表します。

 

 

ここで知っておいていただきたいのが、照度と色温度には相性があるということです。照明設計では古くから、色温度の低い光源は低めの照度に、高い光源は高めの照度に適する、と整理されています。

言い換えると、暗めの空間に青白い光を入れると、寒々しく見える。 冬の新潟の夕方に、この組み合わせは相性が良くありません。

もうひとつが「演色性」です。光が物の色をどれだけ正しく見せるかを表す指標で、Ra(平均演色評価数)という数値で示されます。基準光と同じに見える状態が100です。

JISには、こう書かれています。

Raが80未満の光源は、仕事したり、長い間滞在する室内では使用しないことが望ましい

店舗の世界では、飲食店ならRa90以上、アパレルならRa85以上が実務上の目安とされています。料理がおいしそうに見えるか、服の色が実物どおりに見えるかが、そのまま売上に響くからです。

では、家はどうでしょうか。

家族が一日で最も長く滞在する部屋。無垢の床の色。焼き上がった魚の色。子どもの顔色。——店舗より長く居るのに、店舗より演色性に無頓着でいる理由は、本当はどこにもありません。

 

もちろん、全部の部屋を作り込む必要はありません

「照明にそんなにお金をかけるのか」と思われたかもしれません。そんなことはありません。

廊下・階段・納戸・クローゼットのように、通り過ぎるだけの場所は、シンプルな器具で十分です。ここに凝っても、暮らしの実感はほとんど変わりません。

ちなみにJIS Z 9110:2011の住宅の推奨照度では、居間の団らんは200lx、読書は500lx、台所の調理台は300lx、そして寝室の全般照明は20lxです。すべての部屋を明るくすることが正解ではない、と基準そのものが言っています。

だからおすすめは、「全部こだわる」でも「全部おまかせ」でもなく、長く居る場所だけ、先に決めるという考え方です。

リビング、ダイニング、洗面。この3か所の光の色と演色性を先に決めておくだけで、冬の夕方の居心地はかなり変わります。

モリタ装芸が、住宅の照明を「商業空間の順番」で考える理由

私たちが照明の話を早い段階で持ち出すのは、照明が間取りと同時に決まる要素だからです。

どこに光を置きたいかが決まると、必要な下地の位置が決まります。ダウンライトの配置、間接照明を仕込む折り上げ天井、壁の中を通す配線。これらは、間取りが固まったあとでは動かせなくなることがあります。

「照明は最後に選ぶもの」と考えていると、選べる選択肢が減った状態でカタログを開くことになります。

商業施設では、設計の初期に照明計画を組み込みます。あとから変更が効かないことを、現場が知っているからです。同じ順番を持ち込むだけで、できることの幅は素直に広がります。

私たちは注文家具も自社でつくっていますので、造作の棚やカウンターに照明を仕込む場合も、家具と建築の取り合いを最初から一体で考えられます。ここは、家具を外注する場合とは進め方が変わってくる部分です。

まとめ:新潟の家は、「窓」と同じくらい「あかり」で決まる

新潟の1月、外は56.4時間しか陽が射しません。

その分だけ、家の中のあかりが暮らしの景色をつくっています。照明を「最後に選ぶ設備」ではなく「最初に考える設計」として扱えるかどうかで、冬の過ごしやすさは変わります。

明るさは足りている。でも、なんだか落ち着かない。——そう感じたことがあるなら、その正体は色温度か、演色性か、光の配り方のどれかです。

数値の根拠:日照時間・気温は気象庁「平年値(1991〜2020年)」および新潟地方気象台「新潟県の気象の特徴」より。推奨照度はJIS Z 9110:2011(照明基準総則)、色温度・演色性の区分は照明メーカーの技術資料に基づく一般的な区分値です。

言葉で説明するより、実際に光の下に立っていただくのが一番早いと思います。モリタ装芸のモデルハウスは全11棟。冬の夕方の見学もできますので、外が暗くなる時間帯にぜひ一度いらしてください。

資料請求はこちら

LINEで相談したい方はこちら

「いきなり細かい情報の登録はちょっと…」「少しだけ相談したい」という声に
お答えして、公式アカウントが出来ました!こちらからもお問い合わせできます↓