新潟で家を建てるとき、雪の話はたいてい「新潟だから、それなりに丈夫に造るんでしょう」で終わります。
では実際に、どれくらい丈夫なのか。説明を聞いたことのある方は、あまり多くないと思います。
結論から言うと、新潟市の家は、雪の降らない地域の家のおよそ5倍の重さが屋根に載る前提で設計されています。
そしてもう一つ、あまり語られない前提があります。その設計は「積雪100cmまで」で線が引かれていて、それを超えたら雪下ろしが必要になるということです。
この2つは、セットで知っておいていただきたい話です。
◆東京の5倍。これが新潟市の設計条件です
屋根に載る雪の重さは、計算の仕方が法律で決まっています。垂直積雪量(何cm積もる前提にするか)に、積雪の単位重量(雪1cmあたりの重さ)を掛ける。
この2つが、新潟と東京ではどちらも違います。
| 垂直積雪量 | 単位重量 | 1㎡あたり | |
|---|---|---|---|
| 東京23区 | 30cm | 20N | 600N(約61kg) |
| 新潟市(最小の区域でも) | 100cm | 30N | 3,000N(約306kg) |
積もる量が3倍以上違ううえに、雪1cmあたりの重さも20Nと30Nで違います。 新潟の雪は水分を多く含んで重いためで、法律がその差を織り込んでいます。
屋根の水平投影面積60㎡の家にあてはめると、こうなります。
| 屋根に載る雪の重さ | |
|---|---|
| 東京23区 | 約3.7トン |
| 新潟市 | 約18.4トン |
その差、およそ15トン。 軽自動車なら15台前後を、柱と梁と基礎で受け止めている計算になります。
※これは単位重量に面積を掛けた単純計算です。実際の構造計算では屋根勾配による低減なども考慮されるため、この数値そのものが設計値になるわけではありません。差の大きさを実感していただくための計算だとお考えください。

◆しかも新潟では、雪が載った状態が「普段の姿」です
もう一段、違いがあります。雪をどう扱うかです。
建物の計算では、力を「長期(かかり続ける力)」と「短期(たまにかかる力)」に分けます。地震や台風は短期です。
雪の降らない地域では、雪も短期に入ります。たまに積もるもの、という扱いです。
ところが新潟市は全域が多雪区域に指定されているため(新潟市建築基準法施行細則 第10条)、雪が長期の側に入ります。
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- 常時 → 雪の重さの0.7倍がかかり続ける前提で計算する
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- 地震のとき → 0.35倍の雪が載った状態で揺れる前提で計算する
1㎡あたり約306kgの0.7倍で、約214kg。 これが、新潟の家が普段から背負っていることになっている重さです。
雪のない地域の家とは、柱・梁・基礎の考え方そのものが違うということです。
ちなみに、同じ雪国でも地面の凍結については、新潟市に定めがありません。 雪の重さは厳しく見るのに、凍結深度は定めなし。この組み合わせについては、「雪国だから基礎を深く」は、新潟市には当てはまりませんで詳しく書いています。
◆その代わり、「100cmを超えたら雪下ろし」という約束があります
ここからが、あまり書かれない話です。
新潟市の垂直積雪量は、地区によって100cmから130cmまで定められています。ただし、法律にはこういう規定があります。
雪下ろしを行う慣習のある地方においては、その地方における垂直積雪量が1メートルを超える場合においても、積雪荷重は、雪下ろしの実況に応じて垂直積雪量を1メートルまで減らして計算することができる。(建築基準法施行令 第86条第6項)
つまり、130cmの地区でも、雪下ろしをする前提であれば100cmで計算してよいということです。
モリタ装芸も、新潟市内では全棟、この規定を使って設計しています。
ただし、誰でも好きに下げられるわけではありません。新潟県の運用基準では、この低減が使えるのは「十分な維持管理が行われ、また、危険を覚知した時には速やかに雪下ろしが可能な形状の建築物等」に限る、とされています。屋根の形まで含めて条件になっているということです。
100cmまでは設計で受け止める。それを超えたら、人の手で下ろす。 この線引きが、新潟の住宅の設計です。
◆土地によって、100cmか130cmかが決まっています
低減の前提になる数値そのものも、知っておく価値があります。新潟市建築基準法施行細則の別表第2に、区域ごとの数値が並んでいます。 
| 区域 | 垂直積雪量 |
|---|---|
| 北区のうち松浜・太夫浜・新崎・島見町などの区域 | 100cm |
| 北区のうち上記以外 | 120cm |
| 東区の全域 | 100cm |
| 中央区の全域 | 100cm |
| 江南区のうち曽野木・両川・長潟・大渕などの区域 | 100cm |
| 江南区のうち上記以外 | 120cm |
| 秋葉区のうち小須戸・矢代田・新保・鎌倉などの区域 | 120cm |
| 秋葉区のうち上記以外(新津地区など) | 130cm(市内で最大) |
| 南区のうち月潟・大別當・釣寄などの区域 | 100cm |
| 南区のうち味方・七穂・西白根・山王などの区域 | 110cm |
| 南区のうち上記以外(白根など) | 120cm |
| 西区の全域 | 100cm |
| 西蒲区のうち下記以外 | 100cm |
| 西蒲区のうち岩室温泉・中之口・和納・間瀬などの区域 | 110cm |
低減を使えば、どの地区でも100cmまで下げられます。ただし、低減を使わない設計を選んだ場合は、この差がそのまま構造に出ます。 130cmの地区なら、屋根60㎡で約23.9トン。100cmの地区との差は、約5.5トンです。
なお、敷地が2つの区域にまたがるときは、面積が大きいほうの区域の数値を使うと定められています(別表第2 備考)。新潟市は町名別の一覧も公開していますので、町名まで下りて確認できます。
◆もちろん、積雪量で土地を決める必要はありません
ここまで読むと、積雪量の少ない区の土地を選んだほうがいい、と聞こえたかもしれません。
そうではありません。
土地の良し悪しは、暮らしやすさ、通勤、学区、周辺環境、そして価格で決まります。垂直積雪量は、そのどれよりも優先される条件ではありません。
しかも、雪下ろしを前提にした設計であれば、130cmの地区でも100cmの地区でも、屋根に見込む雪の重さは同じになります。土地によって家の造りが極端に変わるわけではありません。
問題が起きるのは、知らないまま進んだときです。その土地が何cmの地区なのか、雪下ろしはどこから必要になるのか。先に分かっていれば、どちらも計画に織り込めます。

◆まとめ:新潟の家は、雪を「日常」として設計されています
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- 新潟市は全域が多雪区域。積雪の単位重量は1cmごとに1㎡につき30N以上
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- 設計上の雪の重さは1㎡あたり約306kg(100cm換算)。東京23区の約61kgの、およそ5倍
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- 多雪区域では雪は長期の荷重。常時0.7倍、地震時0.35倍が載った前提で計算する
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- 垂直積雪量は地区ごとに100〜130cm。雪下ろしを前提に1mまで下げて計算できる(施行令86条6項)
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- 低減が使えるのは、維持管理ができ、速やかに雪下ろしができる形状の建物に限られる
その前提を知ったうえで土地を選べば、あとから計画を作り直す必要はありません。
数値の根拠:多雪区域の指定・積雪の単位重量・区域ごとの垂直積雪量は、新潟市建築基準法施行細則 第10条および別表第2(第10条関係)より。雪下ろしによる低減は建築基準法施行令 第86条第6項、荷重の組合せは同令 第82条より。低減の適用条件は新潟県垂直積雪量(積雪荷重)運用基準より。東京23区の垂直積雪量は東京都建築基準法施行細則 第32条、多雪区域以外の単位重量は施行令 第86条第2項によります。屋根荷重は単位重量に水平投影面積を乗じた試算値です。
気になっている土地があれば、その住所をお持ちください。その土地の垂直積雪量と、そこにどんな屋根が架けられるかを、同じ打合せの中でお話しできます。
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