【定額制注文住宅『PePe』】選ばれしモノと共に、ミニマルに暮らす

※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。

 

シンプルな白い家を目指して

今回訪れたのは、2021年8月に新潟市江南区(旧亀田町)で新築をしたTさん一家の住まい。

ご夫婦と高校生の長男・中学生の長女の4人家族で、32坪タイプのPePeに暮らしている。

41坪の西側接道の土地は、手前に3台分の駐車スペースが確保されており、その奥に4間×4間(約7.3m×7.3m)の総2階の建物がピタリと納まっている。

軒のない端正な佇まいで、夏の昼下がりの日差しを受けた白い外壁が眩しいくらいに光り輝いていた。

庭はないが玄関先にはプランターがいくつか並べられており、そこではトマトやレタスが育てられていた。

「これでも家族4人で食べ切れないくらい採れるんですよ」と奥様。隣家がそばに迫っている土地だが、午後はたっぷりと日が当たり、野菜がすくすくと育つという。

家を建てる前はアパートで暮らしていたTさん家族は、ゆとりある住まいを求めて新築することを決めた。「いくつかの住宅会社さんを回りましたが、モリタ装芸さんの家がかわいくて好みだったんです」と奥様は話す。

小針にあるPePeのモデルハウスの三角屋根にも惹かれたという。

「持っている物は白色が多く、家も白をベースにしたいと思いました。汚れが目立ちやすい白の方がきれいな状態を保とうと思えるので、それもいいなと考えていました」(奥様)。

そうして、白を基調としたシンプルな住空間を目指し、打ち合わせを進めていった。

 

シューズクロークがないミニマルな玄関

シンプルさを求めるTさん夫婦の価値観は玄関に入った瞬間から感じられる。

玄関は1坪で、決して広くはないが、小さ過ぎることもない。

収納は左手に高さを抑えた下駄箱があるのみで、近年多くの新築住宅で見られるシューズクロークは設けていない。それにより、玄関に入った時に見える情報量が少なくなり、ミニマルな美が生まれている。

近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエが残した「Less is More(レスイズモア)」という有名な言葉がある。「少ない方がより豊かである」という意味で、その言葉がぴったりな玄関だ。

白い面材で存在感を抑えた下駄箱は、取っ手を省略したデザイン。そんな細部にも美意識が現れている。

床はオークの突板(つきいた)のフローリングで、階段の踏板も同じオーク材で統一。踏板以外は白い壁紙で仕上げることで、木の優しい質感が際立って見える。

階段脇をまっすぐ進んだ先にはさりげない造作の洗面台が設けられており、こちらも少ない要素で品よくまとめている。

帰宅後すぐに手洗いができるレイアウトだが、だからと言って玄関から丸見えにするのは避ける。それが玄関ドアを開けた時のシンプルな美しさにつながっている。

 

軽やかで主張しないダイニングテーブル&チェア

階段を登り切った2階がT邸の中心。

階段部分を含めた24畳程のLDKが広がっており、勾配天井が空間に一層のゆとりを感じさせる。

最も高い場所で天井高は3.3m。2.2mと低めに抑えられた1階とのギャップもあり、ダイナミックな変化を感じられる。

「アパートが2階だったこともあり、新築するこの家のリビングも2階にしたいと考えました。2階であれば通りを歩く人と目線が合うこともないですし、防犯面でも安心できます」と奥様。

階段を上がってすぐの場所はダイニング・キッチンで、ダイニングテーブルにはSnow Peakの“ワンアクションテーブルロング竹”が使われている。

「このテーブルはアパートに住んでいた時から使っていて、キャンプ用というよりは自宅用に購入したものです。使わない時に折り畳めるのがいいなと思って選びました」とご主人。

明るい竹製の天板は白を基調とした空間と相性がよく、アルミの脚は隣のステンレスキッチンと呼応する。

竹製の椅子はIKEAの“HANSOLA(ハンソーラ)”、その向かいにあるライトグレーのスタッキングチェアは無印良品のスチールチェア。

どちらもベーシックなデザインで、いい意味で存在感を示さない。昔からこの家に住んでいたかのような、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

存在感を示さないといえば、キッチンのすぐ横にある鉄製の円柱も実にさり気ない。しかしながら、この白い円柱は家のちょうど中心に設けられており、構造的に重要な役割を果たしている。

 

家族みんなで使えるアイランドキッチン

あらゆる要素が脇役であろうとする空間の中で存在感を示しているのが、ステンレス製のアイランドキッチンだ。こちらはサンワカンパニーの“グラッド45”のアイランド型カウンタータイプ。

キャビネットも天板もすべてがステンレスで仕上げられた潔いデザインがT邸によく似合う。

幅2,550mm、奥行850mmの天板は作業がしやすく、キッチンに立てば2階全体を見渡せる。

「会話をしながら料理ができるキッチンにしたくて、アイランド型を希望しました。オープンで家族全員が使いやすく、子どもが料理を作ってくれることも増えましたね」(奥様)。

その後ろにあるのは、大き過ぎない355Lの無印良品の冷蔵庫。幅600mm×奥行662mm×高さ1,729mmのサイズは空間に威圧感を与えることがない。

冷蔵庫の隣は幅約1,800mmの造作カップボード。下部は、無印良品のステンレスユニットシェルフワゴンセットとゴミ箱が納まるスペースに、扉付きの収納が付いたカウンター。オークの突板仕上げで床と調和するようにしている。

その上はtoolboxのステンレス製棚受け金物とオークの集成材を組み合わせた2段の飾り棚。下段にはよく使うカップや皿、上段にはご主人が好きなリキュールが並ぶ。

また、食品のストック類やペットボトルゴミ・空き缶などは、キッチン隣にある白い扉付きの収納に入れるなど、隠せる収納もうまく活用している。

「家の中には好きなものだけを置きたい」。

そう考えるTさん夫婦は衝動買いはせず、ちょっとした小物でも夫婦で相談してから購入するという。

「例えばテーブルの上にあるティッシュボックスカバーを選ぶのにも随分と時間が掛かりました」と奥様は笑う。

「いいな」と思うものを即断で買っていたら、あっという間に家の中は不要品であふれてしまうもの。夫婦のフィルターを通して厳選されたものだけがある住まいには、心地いい余白が感じられる。

 

ホームシアターが楽しめるリビングも

2階の奥の8畳程の空間は、少し光を抑えたリビング空間。

その中心には、キャメル色のレザーが張られたACTUS(アクタス)の“DUBBEL SOFA(デュベルソファ)”が置かれており、ゆったりとくつろげる。

壁掛け式のテレビの他に、BOSEのサウンドバーとベースモジュール、サラウンドスピーカーを組み合わせた3.1chのサラウンドシステムも構築されており、映画館のような迫力ある音響を楽しめるのも特徴だ。

「音楽を聴くのが好きで、ここでライブビデオを見て過ごすことが多いですね。音の反響も良くて気に入っています」とご主人。映画を見ている時は映像と合わせて背後から音が聞こえてきたり、そのリアルな臨場感に引き込まれるという。

テレビの下にTVボードを造作せずすっきりとさせ、その代わりに左手のコーナーに無印良品のスタッキングシェルフを置いてAV機器をまとめている。

造作家具は必要最小限に留め、置き家具と観葉植物でインテリアをつくり込んでいるのもポイントだ。

ソファの後ろにはデスクのようなコーナーがあり、こちらはWi-Fiのルーター置きや、スマホ・タブレット等の充電スペースとして活用している。

 

コンパクトな動線で洗濯・物干しも完結

T邸では、洗面脱衣室や浴室などの水回りも2階にまとめられている。

洗面脱衣室は3畳で、手前には1,500mm幅のゆとりある洗面台。「みんなが朝同じ時間帯に洗面台を使うので、広めにして頂きました」(奥様)。

洗面ボウルとカウンターが一体になったスタイリッシュな洗面台はアイカ工業製で、その名もスタイリッシュカウンター。

その下には収納棚、上にはティッシュも取り出せる収納付きの大きな鏡が造りつけられており、シンプルなデザインと機能が融合している。

また、キッチンの裏手には1.5畳程のコンパクトな物干しスペースも。

こちらは設計を担当したリーベンス香世子さんの提案で後から追加したコーナーなのだそう。

「洗濯物を乾かすのは、ほとんど洗濯乾燥機で行っていますが、毎日部活をしている長男のシャツなどはここに干し、乾いたらそのまま持って行ってもらうようにしています」と奥様。

物干し以外にも、ヨガマットや掃除機など使用頻度が高くかさばるものを収納するスペースにもなっている。

 

光の変化を愉しめる白い空間

長男が部活の朝練に行く前に弁当を作るため、毎朝5:30に起きるという奥様。

「朝起きて2階に上がると、いろいろな窓から光が入ってきて、早朝でも明るく気持ちいいんですよ。それから、西側の窓から夕陽が入ると、2階全体がオレンジ色になってきれいですね。家の全てに満足していますし、家族みんなが長い時間を2階で過ごしています」(奥様)。

「家の居心地がいいので、外出することが少なくなりました。休日は特に用事がなければ家でゆっくりと過ごしています」とご主人。

1階に個室2つと寝室、収納スペースをまとめた一方で、長い時間を過ごすリビングを2階に設けたT邸。

1階と比べて耐力壁の量を抑えられ、高天井にもできる2階のメリットを生かし、開放感あふれるLDKを実現した。

その空間にものを詰め込むのではなく、大事なものを丁寧に選ぶことで、クリアで気持ちいい居場所に仕上げている。

白で統一された空間は美術館のような趣きがあり、居るだけで心が整うような清々しい空気が流れている。

「少ない方がより豊かである」。

近代建築の巨匠の名言が浮かんでくる住まいがここにある。

 

T邸
新潟市江南区
延床面積 104.33㎡(31.50坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2021年8月

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平