【自由設計】ハワイらしさを採り入れた、桜並木を望む家

※本記事は住宅情報WEBマガジンDaily Lives Niigataによる取材記事です。

祖母の畑を譲り受け、桜の木々を眺める家を

今回取材に訪れたのは、2022年12月に新潟市西蒲区(旧巻町)に新築をしたKさん夫婦のお宅。

田んぼや畑が入り交じるのどかな土地に、ガレージを併設した住まいがゆったりと立っている。

「以前は巻駅の近くのアパートに住んでいましたが、子どもが生まれると手狭に感じるようになりました。3階で階段の上り下りが大変でしたし、駐車場が離れていたので冬の雪かきにも苦労していました。元々『子どもが生まれたら次は家を持ちたい』と考えていたのもあり、私のおばあちゃんが所有していた畑を譲り受けて家を建てることにしたんです」と奥様。

土地は西側が車通りの多い県道に隣接しており、その逆の東側には桜並木が続いている。

「この桜並木を最大限に生かした家を建てたくて3社に相談し、その中でも一番いいなと思う提案をくださったモリタ装芸さんに依頼を決めました。他社さんとの打ち合わせで希望を伝えると『できないかも…』と言われたりすることもありましたが、モリタ装芸さんではそういうことがなかったですし、ヒアリングもとても上手でした」(奥様)。

 

ハワイをテーマに据えたガレージ一体の住まい

住まいのテーマは「ハワイ」だったという。

「僕は元々北米の文化が好きだったんですけど、新婚旅行でハワイに降り立った瞬間に僕の中の天秤がガタンとなりました(笑)。陽気な雰囲気があってココナッツのいいにおいがして、風がカラッとしていて気持ちよくて。

写真提供:Kさん

1週間の滞在でしたが、早起きしてダイヤモンドヘッドに登ったり、寝る間を惜しんでオアフ島の各地を回りました。

写真提供:Kさん

それで家を建てるならハワイらしさを感じられる建物にしたいと思ったんです」とご主人。

ガレージを一体にした大きな軒のある外観デザインもそのこだわりの一つだ。

デザインを追求しただけでなく、ガレージから玄関まで丸ごと軒に守られているため、雨が降っても玄関と車の間を濡れずに行き来できるというメリットもある。

ドアを開けた先にある玄関は3畳の空間。

土間の奥には床から天井までの高さがあるFIX窓が設けられており、視線はその先へと抜けていく。ホールへと上がる框(かまち)の幅は約2mと広く、玄関がとてもゆったりしているのも特徴だ。

「実家の玄関が部屋みたいに広く、それを経験して育ったので、玄関は広めにしたいと思っていたんです。シューズクロークはいらないので、その分玄関を広くしてもらいました」と奥様。

壁側に設けた下足入れも、高さを抑えることで圧迫感が出ないようにしており、その上のカウンターは花を飾るのにちょうどいい。

 

ディテールまでこだわった造作洗面台

玄関に立つと、正面にはリビングへとつながる建具があり、そこを開放しておけばリビングの向こうにある桜並木まで視線が抜けていく。

延床面積34坪という一般的な広さの家だが、そんな抜け感が開放感をつくり出し、坪数から想像するイメージよりも広がりを感じさせてくれる。

玄関ホール左手にある洗面室もご夫婦のこだわりが見られる空間だ。

幅1.8mの洗面スペースには、アイカ工業のスタイリッシュカウンターとオーク材の枠がきれいな1枚ものの鏡。

歯ブラシなどの小物を隠せるように、左側には扉付きの収納が造りつけられており、洗面台の上はすっきりとした状態を保つことができる。

他にも乱雑に見えそうなものは無印良品の「ポリエステル麻ソフトボックス」に入れるなど、収納の仕方もよく考えられている。洗面台の左下の空間には、ヘアアイロンをかけられるようにIKEAの折りたたみフックを取り付けたり、細部まで打ち合わせをして造り込んだという。

「サブウェイタイルは小針にあるモリタ装芸さんのモデルハウス『PePe』のキッチンを見て同じようにして頂きました。幅の広い洗面台は2人で同時に使えるのもいいですね。朝夫と歯みがきがかぶる時のストレスがなくなりました(笑)」(奥様)。

洗面台と逆サイドにあるルーバー建具を開けると、3畳の脱衣室兼ランドリーにつながる。

入ってすぐの場所には洗濯機とガス乾燥機「乾太くん」。奥は物干しと収納機能を備えた脱衣スペースになっている。

「IKEAのチェストを置きたくて、その寸法を計算してこの空間を設計して頂きました。それから“乾太さん”は年中使っていてとても重宝しています。タオルがふわふわになるのがうれしいですね」(奥様)。

 

森林浴気分を味わえるリビング

一度玄関ホールに戻り、この家のメインとなるリビングに向かった。

入口から見えるリビングの景色がこちら。

24畳のリビングは正面の3間(約5.4m)分の大開口から桜の木々を眺められる開放的な空間。床は「サクラ・ダ・バーチ」と名付けられたバーチ(カバ)の一種。程よく入った節がきれい過ぎず自然体で、その先に広がる風景と調和している。

「『ハワイの家』という本を参考にしていて、この床の赤みがかったオレンジ色がハワイらしくていいなと思い選びました。リビングから見える桜の景色がきれいで、日中はカーテンを開け放して暮らしています」(奥様)。

空間の中央にある化粧柱よりも窓側は下屋になっており、屋根なりの勾配天井にすることで空間に変化をつくり出している。

高さ2,200mmの掃き出し窓はダイナミックに桜並木の風景を映し出し、いつでも自然をすぐそばに感じることができる。

「桜の時期にはワインやチーズを買ってきて、デッキでお花見をしました。ゴールデンウィークには友達を招いたんですが、料理をしてもてなすことが楽しかったですね。アパート暮らしの時には人を招くということがなかったので」と奥様。

シンプルで優しいデザインのダイニングセットやソファ、TVボードはunico(ウニコ)の家具。「モリタ装芸さんの見学会で見ていいなと思っていた家具がunicoで、東京の二子玉川のお店に見に行って購入しました」(奥様)。

ソファの横にはモリタ装芸の家具工場でつくられたスツールがサイドテーブル代わりに置かれている。必要以上にものを増やさないように注意しているとKさん夫婦は話す。

「ものが少ないことで掃除がしやすいですし、気持ちもラクになります。空間をすっきりとさせることで、家具や照明一つ一つが際立っているように思いますし、これからもこの状態を維持していきたいですね」(奥様)。

キッチンの天板は人工大理石製で、存在感を主張しない白がシンプルな空間によく似合う。キッチンから空間全体や外の景色までを見渡せるのもいい。

白いキッチンにしたことで手入れをすることが以前よりも増えたが、毎日のシンクの掃除も楽しみになっているという。

キッチン後ろの造作カップボードはモデルハウスPePeのデザインをオマージュしたもので、立体感のある面材と黒いつまみがかわいい。

キッチンの奥の目立たない場所は一部階段下も活用したパントリーで、食品ストックや調理家電をここに納めている。

目立たないパントリーにはウィリアム・モリスのアクセントクロス。全てをシンプルにまとめるのではなく、さり気ない遊び心も大事にしている。

 

夫婦の意見のぶつかり合いも解決してくれた

「家づくりの過程では僕たち夫婦の間で意見が合わずに揉めることも多かったんですよ。それで毎回『懸念ノート』にありとあらゆる懸念事項を書いて打ち合わせに臨んでいました。

相談するといつもしっかりとした理由を説明した上でどうするといいかを導いてくださったんです。僕たち2人で話しているとお互いに譲れずにケンカになりがちだったんですが、それをいつも解決して頂いていましたね(笑)」とご主人。

営業担当の櫻田佳子さんは「夫婦で意見がぶつかり合ったことを設計担当と一緒に解決していく過程も楽しかったですよ(笑)。それに、家づくりでお二人がやりたいことやその思いがはじめから強く伝わってきましたので、イメージをくみ取りやすかったですね。ご自宅が完成し定期点検に訪れた時、お二人から満足した様子が伝わってきてうれしかったです」と振り返る。

「洗濯などの家事もやりやすくなりましたし、それによって心に余裕ができ、夫婦喧嘩というかお互いピリピリすることが減りました。シンプルな空間は花を飾ると際立つので、フラワーベースや花を買うのも楽しみになっています。これからは外構を整えたり、あと2階のホールにつくって頂いた“角田山を眺める読書スペース”用の椅子を買い足したいですね」(奥様)。

祖母から受け継いだ土地で叶えた理想の住まい。そこに詰め込んだのは新婚旅行で訪れたハワイの明るく大らかな空気感。

かつて畑だった場所は豊かな自然環境を存分に味わえる住まいへと変貌を遂げた。ココナッツの香りの代わりに、ここには稲の香りや桜の香りが風と共に運ばれてくる。

 

K邸
新潟市西蒲区
延床面積 114.00㎡(34.40坪)+ガレージ40.57㎡(12.24坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年12月

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平